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健康食品市場攻略の鍵
− カテゴリーオタク分析より
健康食品市場を捉える問題意識
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図表1.特定保健用食品の推定市場規模の推移
図表2.特定保健用食品の用途分類
特定保健用食品(以下トクホ)市場の成長が鈍化している。2005年で約6,300億円の規模に達したものの、2001年をピークに成長性は鈍化している(図表1)。
その規模は用途分類によって異なっている。最も規模が大きいのはヨーグルトを中心とする「整腸 59%」、次にガムを中心とする「歯 15%」、食用油や茶飲料などで多い「中性脂肪・体脂肪 14%」でこれらで約90%を占める。「整腸」は既に整腸に効果のある健康食として認知され規模が急拡大していたヨーグルトの主要ブランドが後からトクホ取得したものであり、「歯」も機能性を強化を既に進めていたガムがトクホを取得したものである。必ずしもトクホの認定を受けたことが市場拡大の要因になったとは考えにくい。一方で「中性脂肪・体脂肪」はエコナなど最初からトクホ商品として開発されたものが多いが、「中性脂肪・体脂肪」の機能自体が疾病予防の他は「ダイエット・美容」の感覚でも捉えられ、そのためユーザー層広くに受け入れられたためとも考えられる。比較的疾病予防に感覚的に近いと思われる「コレステロール」「血圧」は数%に過ぎない(図表2)。
トクホ以外に法律で定義された健康食品には「栄養機能食品」があるが、一般的に利用されている健康食品の大部分は法律では定義されない単なる食品である。公的には「いわゆる健康食品」と言った仮称で呼ばれている(図表3)。「いわゆる健康食品」市場は推定で1兆2,000億円に達すると推定されている。
図表3.「医薬品」「保健機能食品」「一般食品」の区分と表示内容
以上から、ユーザーは「トクホ」のような公的認定に魅力を感じ、説得されているわけではなく、別のメカニズムで健康食品を選択購入しているという仮説が考えらえる。また、健康食品には医薬品のような確たる疾病治療や予防とは異なる機能効果期待の方が大きいという仮説も考えられる。
本稿では、弊社の健康高関心リーダーモニター30代〜50代女性複数名へのインタビュー結果を基に、健康食品市場攻略に資する健康意識や食の選択の深層を探ってみることで、これらの仮説を定性的に検討してみた。ここでいう健康食品は「いわゆる健康食品」も含む、錠剤などから一般食品の形態をとるものまで、健康機能が訴求されている食品を幅広く指す広義の健康食品とする。以下にはインタビューから得られたポイントを整理する。
1. 健康への強い動機は美と生への欲求から生まれる
特に女性の場合は健康意識が美容意識と不可分となっており、「美容を意識したダイエットなどをこころがけると、それは結果として健康にもつながる」反対に「健康を意識すると美容への意識もより強くなる」という意識構造になっている。いくつになっても他者への関心、いろいろな物事への興味関心を失わないことが生への原動力(健康意識)となっており、このことが他者の目を意識した自身の姿・理想の自分を強く意識づけることになり(美容意識)、両者は強く結びつき相互に作用している。
■ 52歳子手離れ有職主婦Aさん:美容目的のダイエットと健康目的のダイエットが一致
「私は40代前半頃まで太りにくかったので、安心してジャンクフードでも何でも、バクバク食べてました。」(もともと40代前半までは健康意識は高くはなかった)
「40代後半になりましたらさすがに身体にきたんです。太りだしてきて。そうしたら同時に健康診断の数値にはっきり出てきちゃって。コレステロール値とか中性脂肪が増えちゃったんです。」(太ったことが不健康のシグナルとなった)
「ちょうどその頃太って(スタイルが)気になってエステに行って2、3キロはやせたんですけど目標まではいかなかったんです。これもっと続ければ目標いきますとかって言われたんですけど、高いんですよ。エステはもったいないなと思ってやめちゃったんです。」(美容目的に痩せたくてエステへ行っていたがコスト面から方針変更)
「健康診断の結果を改善するためには、結局体重を減らすことが必要でダイエットと一緒だと。そのためには夕食を早くして夜遅くには一切飲食しない。1日5杯ぐらいコーヒーを飲んでいたのを1日2杯ぐらいにして、そのかわりヘルシア緑茶を必ず1本飲むようになりました。」(健康目的のダイエットと美容目的のダイエットが一致)
■ 55歳子手離れ有職主婦Bさん:美や若さへの執着から美容と健康を同時に追及
「子育てが一段落して我と我が身を見て、こんなだったのかしらと思ってショックを受けて。本当はプチ整形をしたいけど、そこまでの勇気は無いです。美しくなりたいという願望は人一倍あるが、それに伴う努力と根気がちょっと足りないと思う。」(美への強い欲求)
「異性の好みの人を見たら瞳孔が開いてアドレナリンが出て、それが女性ホルモンを活発にさせて美しく元気になると雑誌に書いてあったんです。元気で若くいようと思うのは、私達の年は先が見えかかってきている時だから自分で自分を活性化させて、何でもしてみようと。」(生への強い欲求)
「40半ば過ぎからの体力の衰えから、普通に何か食べているだけではなく、何かを補って行かないと体を保てないと思ってサプリメントを摂るようになりました。」「美容と健康は同じです。だから健康を追求していると美容も良くなる。美容を追及すると結局健康にも良いので、結局同じこと。」(美容と健康の一致)
また、美容意識とはあまり関係なく、本人の疾病経験や身近な人の死や疾病経験が契機(死への恐怖)となって、健康意識が高まり健康行動の強い動機となる場合がある。
■ 42歳 子育て有職主婦Cさん:出産を契機に意識がかわりはじめ、大病経験で高まる
「家庭をもって、まず子どもが生まれてからお水とかに対して気をつかうようになった。少しずつ少しずついろいろなことが気になり出して。」
「主人と同い年の友だちが脳溢血で倒れちゃったりとかして、テレビからの情報「あるある」でもいろいろやっていますよね。ああいうテレビ番組がすごく目に耳に入るようになって(刺激されて)」
「もう4年たったんですけど乳癌になって手術したんです。それから、すぐ効かなくてもからだにいいものは何でも試してみようという気になっちゃうんですね。」
2. 健康リーダーの情報深化と体験のフィルターを経た健康情報は、複数のネットワークへ加速的に広がっていく
健康に関する情報はテレビの情報番組が大きく関与しているが、それだけでは個々人への一方通行の影響でしかなく、最初の露出量に依存する。メディアや口コミで得た情報を、健康リーダーは自分でインターネット検索で調べ、詳細な知識情報を得て実践し、その体験談が複数の付き合いのネットワークに乗って加速的に広がっていく。時には「健康版都市伝説」のような情報が伝播していくこともある。
インタビューでみられた「ノニ」の情報ケースをみてみる。ノニとは主に赤道付近の熱帯地方に群生する熱帯植物で、その実は各種ビタミンやミネラルなど非常に多くの栄養素を持った強力なハーブフルーツである。ノニの果実は実をつけてから数週間で醗酵を始め、その醗酵液には各種酵母菌や酵素、アミノ酸、中鎖脂肪酸、ポリフェノール類など有用な成分が多数含まれるという。(未解明な部分が多い)その果汁のジュースが健康食品として販売されているが、高価で味が非常にまずいこと、まだ解明されていない多様な成分、効能が話題となっている。
同級生の友だちと旅行に行ったときに、健康についての話題がよく出る。そこでノニジュースの話題が出た(最初の情報接触経路)
「勧めてくれた友だちは、これを飲めば悪いところに効くっていうんです。その人はちょっと副鼻腔炎みたいに鼻が詰まっててむずむずしてどうしようもなかったのがノニを1週間ぐらい飲んだら、ある日突然びっくりするぐらい臭い鼻汁がいっぱい出て、そのあとすごいスッキリしてよくなったっていうのです。ノニを飲むと体の悪いところに反応が出るんですって。お通じが悪い人は通じがよくなるとか。」(体験者情報)
「乳癌の手術でリンパも切ったので、傷口の治りが悪くすごくいやな匂いがしてたんです。友達に薦められてノニを飲み出したら、治りが先生がびっくりするぐらい早くて、嫌な匂いも消えて。」(体験者情報)
「家に帰ってインターネットでいろいろ調べてみたら、いろいろな産地があって、すごく飲みやすいのもあることがわかったが、4本パックで2万円もした。」(情報検索・情報深化)
フィットネスクラブ仲間は健康情報が最も早く集まる。そこで仕入れた情報を他の趣味のサークルなどで話して広めることも多い。コントレックス(ミネラルウォーターのブランド)が流行はじめの時は、フィットネスクラブに持ってきて飲んでいた人から広まっている。お互いの持ち物にも目ざといという。
女性ばかりの職場も美容や健康に関する情報は広まりやすい。異なる年代が混在していると、例えば更年期の症状など経験者とこれからの年代の人とでアドバイス的な情報のやりとりがあるという。(情報の加速拡大)
このようにフィットネスクラブ、女性の職場で濃密な情報交換が行われ、他コミュニティーへの拡大を促進している。
3.商品の定着条件は、効果が実感できること、実感した気分になる情報があること、食品として日常的に受け入れやすいこと(味、価格、用途)である
情報は拡大伝播していくものの、定着する商品と一過性で終わる商品に分かれる。その差をみていく。
「定着したもの」
ヨーグルト
朝食の定番アイテムになっているが、毎朝サプリメント感覚で摂ったり(コーヒー+ヨーグルトのみ)、デザート感覚、夕食を控える時にお腹を満たすために摂ったり、ダイエットのために食事の前にヨーグルトを摂ったり、さまざまな用途で利用されている。また、整腸効果便通効果は最も体感されやすい効果である。
納豆
毎日朝食か夕食いずれかに出現する定番アイテムになっており、冷蔵庫に常備されている。体感できる効果はないが、「血液サラサラ効果」の代名詞となっている。テレビの情報番組でよく見る、血流をスリットの間に流すあの画像が効果の信憑性となっている。
きなこ、寒天パウダー
きなこはヨーグルトにかけて、寒天パウダーは食物繊維をとるためにご飯に入れて炊いたりと、手軽さで支持されている。
「定着しなかったもの」
ココア
流行っている時は意識して一生懸命飲んでいるが、特に体感できる効果があるわけではなく、飲み慣れているインスタントコーヒーと比べると溶かすのがめんどうで、やめてしまっている。
ノニ
味がまずく、価格が高いこともあり、神秘的な効果を体感できなかった人は続いていない。特別な商品は期待値もあがるので評価を得るのもかえって難しいと考えられる。
また、定着させる条件として、家族全員で共有できることがあげられていた。
「家族を持って仕事もしていると、買い物は週末の土日に買いだめしてくるわけですよ。そのときに本当に必要なものだけを短時間で選んで買ってこなきゃいけないから、あまり一般的じゃないもの、もしくは自分だけ特別なものというのは、ついつい買い忘れがちになって。いったん途切れると、それっきりになるんです。本当にいいなと思うのは、どこにでもありふれているような、家族みんなが受け入れられやすいものじゃないと続けられないなと実感しています。」
4.「一般健康食材」「サプリメント」「トクホ」の認識とプライオリティー
今回実施したインタビュー対象の健康リーダーにはサプリメントだけを過剰摂取するような人は見られなかった。ふだんの食事で「カロリーをコントロール」しながら「バランスをとる」ことを健康の主眼にしており、1日30品目、食事時間・タイミングなどがそのバランスをとる鍵となっていた。
ふつうの食材を「健康食」として再評価し、独自に手を加えてとり入れたものに価値を感じている。たとえば、手作りのバナナ酢や、ドライプルーンを鍋で煮て柔らかくして利用(市販の液状プルーンより安価)、数種類のお茶や穀物をブレンドした独自の健康茶など。自分で楽しみながら手間をかけて、作る行程も楽しんでいる。
一方でビタミンサプリメント、ビタミ剤(保険薬)や鉄分、ウコンなどはぞれが薬なのか、健康食品なのかはあまり違いを意識せずにベーシックなサプリメントとして補助的に利用している。
セサミン、やずやの香酢、にんにく卵黄、ノニなどの比較的単価の高いサプリメントは仲間の体験者情報など信頼度の高い情報に接触した直後は一度は手を出しているが、価格や効果実感がネックとなってあまり定着化していない。定着するのは、乳癌の手術を受けた人など深刻な疾病経験のある人が多いと思われる。
トクホについてはその意味は知っていたが、厚生労働省が「いわゆる健康食品」と呼ぶ一般サプリメントと、価値の優劣の認識は見られなかった。トクホは機能効果の保証というよりは、安心・安全性のマークという受け止め方も見られた。トクホについては仲間内で話題に出ることも少なく、機能効果が明確になっている反面、健康の好奇心を満たす情報には欠けているようである。
「安心マークみたいな感じで、工業製品にJISマークがついているじゃないですか。それの食品版みたいな感じで特保がついていれば安心かな。」
このような受け止め方のため、「家庭で必須の食材がトクホであれば選ぶことが多い」「お菓子などは自分で楽しむものなので、あえてジャンクなものは選ばないが、かと言ってトクホである必要性はあまりない。」と、カテゴリーによってトクホの存在価値が異なっている。必須食材のトクホについては「良質の食材」というポジションに近い。
「健康のことはすごく重視して油なんかとても大切じゃないですか。だから200〜300円高くても、健康にこちらのほうがいいと思うなら高いとは思いません。」
健康リーダーの間で最もポピュラーな(継続購入している)トクホ商品は食用油、ヘルアシア緑茶、ヨーグルトであった。これには、「良質食材」といいながら、特定の機能には別の受け入れ方があるためと考えられる。共通認識であった「油なんかとても大切じゃないですか」の発言には「油」→「高カロリー・脂肪」→「健康管理の基本としてのカロリーコントロール」→「ダイエットとしてのカロリー制限」→「健康と不可分な美容願望」と理解できる。ヘルシア緑茶も同様である。ヨーグルトは、「お通じ」→「整腸効果」→「体内浄化」→「美肌効果」→「健康と不可分な美容願望」と理解できる。
一方で疾病予防効果に近い「高血圧」「血糖値」効果については機能/価格のコストパフォーマンスの視点が強くなり、シビアになる。
「血圧が高めになってきちゃったから血圧を下げるための、鰯の油が入ったようなトクホのジュースを買おうかなと迷っているんですが、24缶入って6,300円もするんです。ずっと飲み続けなきゃいけないし、、それはちょっとつらいかなと思って迷っています。だったら食品のほうで手間をかけても(鰯料理を作って)、手っとり早くやるよりもお金かけないでやろうかなと。」
5.健康食品市場攻略の鍵
健康高関心リーダーの定性的な理解から、健康食品市場攻略の鍵をまとめると次のとおりである。
美と生への欲求・願望の心の琴線を狙え
特に女性の方がその意識は強いが、男性も潜在的にはそうである。疾病者及びそれに近い人は病気の治療、及び発症を抑える必要があり、その役割は医薬品であり、科学的な食餌療法である。未病領域にある人は「病気になりたくない」のが最終目的ではなく、「美しく」「楽しく」人生を生きたいのである。
美と生への欲求につながるカテゴリー・アイテムを選択せよ
中性脂肪は≒ダイエット美容であり永続的なテーマであり際限がない欲望である。より細くより美しく。しかし血糖値、血圧は正常化すればそれで良い。よりよくを追及するテーマを発見しアプローチすべきである。
欲求・願望の心の琴線にふれる情報を開発せよ
もちろん、科学的な裏付けは必要ではあるが、データだけでは説得できない。リアルな(影響力のある人)の体験者情報や、実感に近い表現方法である。「血液サラサラ」や血流をスリットに通す実験映像などである。また、有用な用途用法情報も価値を増す。
リーダーのいるコミュニティーを狙え
健康関心の高い人が多いコミュニティーでは、多くの情報が集まって来るが、フィルターにかけられ、時にはオリジナルな工夫や用途の情報が付加され、他のコミュニティーに拡大して伝播していく。フィットネスクラブはかつては一部の人のコミュティーであったが今は「普通に高感度な」人達があつまる場所に変わってきている。効率よくマスを狙えるコミュティーのひとつだろう。
食品として当たり前の商品設計
おいしい
安全・高品質
手頃な価格
ポピュラーな食材カテゴリー
以上は長期継続の基本条件である。
真に健康意識の高い人はサプリメントに過剰依存せずに、バランスの良い楽しい食生活を志向している。まだまだ、健康情報番組のトレンドに影響されやすいが、それは流行に乗っているのであり、楽しんでいる側面が大きい。以下は健康意識の高い人の食に対する考え方のポイントである。
一度は健康食材の流行に乗るが、それだけでは長続きしない
ふだんの食事が大事だが、昔と比べて今の野菜は栄養素が激減しているから、サプリで適度に補なった方がいい
食べ物だけではなく適度な運動は年齢とともに特に必要
食事というのは栄養面だけではなく、家族で食卓で楽しみながら同じものを食べる時間を共有することの意味が大きい
ダイエットでがまんすることも大切だが、あまり細かいこと気にせずに、食を楽しむことももっと大切
最近のキーワードは「1日30品目」である。これも流行といえば流行であるが、単品食材、単機能効果の情報に振り回され、過剰にその商品を偏食するというトレンドは終わりに近づいているのかもしれない。しかしながら、時間もない、知識もない、技術もない、多くのユーザーにはハードルが高い。これは単品ヒットで解決できる問題ではない。トータルにこの問題に真摯に取り組める企業が求められているのだろう。
copyrightc2006 Japan Consumer Marketing Research Institute. all rights reserved.
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図表2.特定保健用食品の用途分類
特定保健用食品(以下トクホ)市場の成長が鈍化している。2005年で約6,300億円の規模に達したものの、2001年をピークに成長性は鈍化している(図表1)。
その規模は用途分類によって異なっている。最も規模が大きいのはヨーグルトを中心とする「整腸 59%」、次にガムを中心とする「歯 15%」、食用油や茶飲料などで多い「中性脂肪・体脂肪 14%」でこれらで約90%を占める。「整腸」は既に整腸に効果のある健康食として認知され規模が急拡大していたヨーグルトの主要ブランドが後からトクホ取得したものであり、「歯」も機能性を強化を既に進めていたガムがトクホを取得したものである。必ずしもトクホの認定を受けたことが市場拡大の要因になったとは考えにくい。一方で「中性脂肪・体脂肪」はエコナなど最初からトクホ商品として開発されたものが多いが、「中性脂肪・体脂肪」の機能自体が疾病予防の他は「ダイエット・美容」の感覚でも捉えられ、そのためユーザー層広くに受け入れられたためとも考えられる。比較的疾病予防に感覚的に近いと思われる「コレステロール」「血圧」は数%に過ぎない(図表2)。
トクホ以外に法律で定義された健康食品には「栄養機能食品」があるが、一般的に利用されている健康食品の大部分は法律では定義されない単なる食品である。公的には「いわゆる健康食品」と言った仮称で呼ばれている(図表3)。「いわゆる健康食品」市場は推定で1兆2,000億円に達すると推定されている。
図表3.「医薬品」「保健機能食品」「一般食品」の区分と表示内容
以上から、ユーザーは「トクホ」のような公的認定に魅力を感じ、説得されているわけではなく、別のメカニズムで健康食品を選択購入しているという仮説が考えらえる。また、健康食品には医薬品のような確たる疾病治療や予防とは異なる機能効果期待の方が大きいという仮説も考えられる。
本稿では、弊社の健康高関心リーダーモニター30代〜50代女性複数名へのインタビュー結果を基に、健康食品市場攻略に資する健康意識や食の選択の深層を探ってみることで、これらの仮説を定性的に検討してみた。ここでいう健康食品は「いわゆる健康食品」も含む、錠剤などから一般食品の形態をとるものまで、健康機能が訴求されている食品を幅広く指す広義の健康食品とする。以下にはインタビューから得られたポイントを整理する。
1. 健康への強い動機は美と生への欲求から生まれる
特に女性の場合は健康意識が美容意識と不可分となっており、「美容を意識したダイエットなどをこころがけると、それは結果として健康にもつながる」反対に「健康を意識すると美容への意識もより強くなる」という意識構造になっている。いくつになっても他者への関心、いろいろな物事への興味関心を失わないことが生への原動力(健康意識)となっており、このことが他者の目を意識した自身の姿・理想の自分を強く意識づけることになり(美容意識)、両者は強く結びつき相互に作用している。
■ 52歳子手離れ有職主婦Aさん:美容目的のダイエットと健康目的のダイエットが一致
「私は40代前半頃まで太りにくかったので、安心してジャンクフードでも何でも、バクバク食べてました。」(もともと40代前半までは健康意識は高くはなかった)
「40代後半になりましたらさすがに身体にきたんです。太りだしてきて。そうしたら同時に健康診断の数値にはっきり出てきちゃって。コレステロール値とか中性脂肪が増えちゃったんです。」(太ったことが不健康のシグナルとなった)
「ちょうどその頃太って(スタイルが)気になってエステに行って2、3キロはやせたんですけど目標まではいかなかったんです。これもっと続ければ目標いきますとかって言われたんですけど、高いんですよ。エステはもったいないなと思ってやめちゃったんです。」(美容目的に痩せたくてエステへ行っていたがコスト面から方針変更)
「健康診断の結果を改善するためには、結局体重を減らすことが必要でダイエットと一緒だと。そのためには夕食を早くして夜遅くには一切飲食しない。1日5杯ぐらいコーヒーを飲んでいたのを1日2杯ぐらいにして、そのかわりヘルシア緑茶を必ず1本飲むようになりました。」(健康目的のダイエットと美容目的のダイエットが一致)
■ 55歳子手離れ有職主婦Bさん:美や若さへの執着から美容と健康を同時に追及
「子育てが一段落して我と我が身を見て、こんなだったのかしらと思ってショックを受けて。本当はプチ整形をしたいけど、そこまでの勇気は無いです。美しくなりたいという願望は人一倍あるが、それに伴う努力と根気がちょっと足りないと思う。」(美への強い欲求)
「異性の好みの人を見たら瞳孔が開いてアドレナリンが出て、それが女性ホルモンを活発にさせて美しく元気になると雑誌に書いてあったんです。元気で若くいようと思うのは、私達の年は先が見えかかってきている時だから自分で自分を活性化させて、何でもしてみようと。」(生への強い欲求)
「40半ば過ぎからの体力の衰えから、普通に何か食べているだけではなく、何かを補って行かないと体を保てないと思ってサプリメントを摂るようになりました。」「美容と健康は同じです。だから健康を追求していると美容も良くなる。美容を追及すると結局健康にも良いので、結局同じこと。」(美容と健康の一致)
また、美容意識とはあまり関係なく、本人の疾病経験や身近な人の死や疾病経験が契機(死への恐怖)となって、健康意識が高まり健康行動の強い動機となる場合がある。
■ 42歳 子育て有職主婦Cさん:出産を契機に意識がかわりはじめ、大病経験で高まる
「家庭をもって、まず子どもが生まれてからお水とかに対して気をつかうようになった。少しずつ少しずついろいろなことが気になり出して。」
「主人と同い年の友だちが脳溢血で倒れちゃったりとかして、テレビからの情報「あるある」でもいろいろやっていますよね。ああいうテレビ番組がすごく目に耳に入るようになって(刺激されて)」
「もう4年たったんですけど乳癌になって手術したんです。それから、すぐ効かなくてもからだにいいものは何でも試してみようという気になっちゃうんですね。」
2. 健康リーダーの情報深化と体験のフィルターを経た健康情報は、複数のネットワークへ加速的に広がっていく
健康に関する情報はテレビの情報番組が大きく関与しているが、それだけでは個々人への一方通行の影響でしかなく、最初の露出量に依存する。メディアや口コミで得た情報を、健康リーダーは自分でインターネット検索で調べ、詳細な知識情報を得て実践し、その体験談が複数の付き合いのネットワークに乗って加速的に広がっていく。時には「健康版都市伝説」のような情報が伝播していくこともある。
インタビューでみられた「ノニ」の情報ケースをみてみる。ノニとは主に赤道付近の熱帯地方に群生する熱帯植物で、その実は各種ビタミンやミネラルなど非常に多くの栄養素を持った強力なハーブフルーツである。ノニの果実は実をつけてから数週間で醗酵を始め、その醗酵液には各種酵母菌や酵素、アミノ酸、中鎖脂肪酸、ポリフェノール類など有用な成分が多数含まれるという。(未解明な部分が多い)その果汁のジュースが健康食品として販売されているが、高価で味が非常にまずいこと、まだ解明されていない多様な成分、効能が話題となっている。
同級生の友だちと旅行に行ったときに、健康についての話題がよく出る。そこでノニジュースの話題が出た(最初の情報接触経路)
「勧めてくれた友だちは、これを飲めば悪いところに効くっていうんです。その人はちょっと副鼻腔炎みたいに鼻が詰まっててむずむずしてどうしようもなかったのがノニを1週間ぐらい飲んだら、ある日突然びっくりするぐらい臭い鼻汁がいっぱい出て、そのあとすごいスッキリしてよくなったっていうのです。ノニを飲むと体の悪いところに反応が出るんですって。お通じが悪い人は通じがよくなるとか。」(体験者情報)
「乳癌の手術でリンパも切ったので、傷口の治りが悪くすごくいやな匂いがしてたんです。友達に薦められてノニを飲み出したら、治りが先生がびっくりするぐらい早くて、嫌な匂いも消えて。」(体験者情報)
「家に帰ってインターネットでいろいろ調べてみたら、いろいろな産地があって、すごく飲みやすいのもあることがわかったが、4本パックで2万円もした。」(情報検索・情報深化)
フィットネスクラブ仲間は健康情報が最も早く集まる。そこで仕入れた情報を他の趣味のサークルなどで話して広めることも多い。コントレックス(ミネラルウォーターのブランド)が流行はじめの時は、フィットネスクラブに持ってきて飲んでいた人から広まっている。お互いの持ち物にも目ざといという。
女性ばかりの職場も美容や健康に関する情報は広まりやすい。異なる年代が混在していると、例えば更年期の症状など経験者とこれからの年代の人とでアドバイス的な情報のやりとりがあるという。(情報の加速拡大)
このようにフィットネスクラブ、女性の職場で濃密な情報交換が行われ、他コミュニティーへの拡大を促進している。
3.商品の定着条件は、効果が実感できること、実感した気分になる情報があること、食品として日常的に受け入れやすいこと(味、価格、用途)である
情報は拡大伝播していくものの、定着する商品と一過性で終わる商品に分かれる。その差をみていく。
「定着したもの」
ヨーグルト
朝食の定番アイテムになっているが、毎朝サプリメント感覚で摂ったり(コーヒー+ヨーグルトのみ)、デザート感覚、夕食を控える時にお腹を満たすために摂ったり、ダイエットのために食事の前にヨーグルトを摂ったり、さまざまな用途で利用されている。また、整腸効果便通効果は最も体感されやすい効果である。
納豆
毎日朝食か夕食いずれかに出現する定番アイテムになっており、冷蔵庫に常備されている。体感できる効果はないが、「血液サラサラ効果」の代名詞となっている。テレビの情報番組でよく見る、血流をスリットの間に流すあの画像が効果の信憑性となっている。
きなこ、寒天パウダー
きなこはヨーグルトにかけて、寒天パウダーは食物繊維をとるためにご飯に入れて炊いたりと、手軽さで支持されている。
「定着しなかったもの」
ココア
流行っている時は意識して一生懸命飲んでいるが、特に体感できる効果があるわけではなく、飲み慣れているインスタントコーヒーと比べると溶かすのがめんどうで、やめてしまっている。
ノニ
味がまずく、価格が高いこともあり、神秘的な効果を体感できなかった人は続いていない。特別な商品は期待値もあがるので評価を得るのもかえって難しいと考えられる。
また、定着させる条件として、家族全員で共有できることがあげられていた。
「家族を持って仕事もしていると、買い物は週末の土日に買いだめしてくるわけですよ。そのときに本当に必要なものだけを短時間で選んで買ってこなきゃいけないから、あまり一般的じゃないもの、もしくは自分だけ特別なものというのは、ついつい買い忘れがちになって。いったん途切れると、それっきりになるんです。本当にいいなと思うのは、どこにでもありふれているような、家族みんなが受け入れられやすいものじゃないと続けられないなと実感しています。」
4.「一般健康食材」「サプリメント」「トクホ」の認識とプライオリティー
今回実施したインタビュー対象の健康リーダーにはサプリメントだけを過剰摂取するような人は見られなかった。ふだんの食事で「カロリーをコントロール」しながら「バランスをとる」ことを健康の主眼にしており、1日30品目、食事時間・タイミングなどがそのバランスをとる鍵となっていた。
ふつうの食材を「健康食」として再評価し、独自に手を加えてとり入れたものに価値を感じている。たとえば、手作りのバナナ酢や、ドライプルーンを鍋で煮て柔らかくして利用(市販の液状プルーンより安価)、数種類のお茶や穀物をブレンドした独自の健康茶など。自分で楽しみながら手間をかけて、作る行程も楽しんでいる。
一方でビタミンサプリメント、ビタミ剤(保険薬)や鉄分、ウコンなどはぞれが薬なのか、健康食品なのかはあまり違いを意識せずにベーシックなサプリメントとして補助的に利用している。
セサミン、やずやの香酢、にんにく卵黄、ノニなどの比較的単価の高いサプリメントは仲間の体験者情報など信頼度の高い情報に接触した直後は一度は手を出しているが、価格や効果実感がネックとなってあまり定着化していない。定着するのは、乳癌の手術を受けた人など深刻な疾病経験のある人が多いと思われる。
トクホについてはその意味は知っていたが、厚生労働省が「いわゆる健康食品」と呼ぶ一般サプリメントと、価値の優劣の認識は見られなかった。トクホは機能効果の保証というよりは、安心・安全性のマークという受け止め方も見られた。トクホについては仲間内で話題に出ることも少なく、機能効果が明確になっている反面、健康の好奇心を満たす情報には欠けているようである。
「安心マークみたいな感じで、工業製品にJISマークがついているじゃないですか。それの食品版みたいな感じで特保がついていれば安心かな。」
このような受け止め方のため、「家庭で必須の食材がトクホであれば選ぶことが多い」「お菓子などは自分で楽しむものなので、あえてジャンクなものは選ばないが、かと言ってトクホである必要性はあまりない。」と、カテゴリーによってトクホの存在価値が異なっている。必須食材のトクホについては「良質の食材」というポジションに近い。
「健康のことはすごく重視して油なんかとても大切じゃないですか。だから200〜300円高くても、健康にこちらのほうがいいと思うなら高いとは思いません。」
健康リーダーの間で最もポピュラーな(継続購入している)トクホ商品は食用油、ヘルアシア緑茶、ヨーグルトであった。これには、「良質食材」といいながら、特定の機能には別の受け入れ方があるためと考えられる。共通認識であった「油なんかとても大切じゃないですか」の発言には「油」→「高カロリー・脂肪」→「健康管理の基本としてのカロリーコントロール」→「ダイエットとしてのカロリー制限」→「健康と不可分な美容願望」と理解できる。ヘルシア緑茶も同様である。ヨーグルトは、「お通じ」→「整腸効果」→「体内浄化」→「美肌効果」→「健康と不可分な美容願望」と理解できる。
一方で疾病予防効果に近い「高血圧」「血糖値」効果については機能/価格のコストパフォーマンスの視点が強くなり、シビアになる。
「血圧が高めになってきちゃったから血圧を下げるための、鰯の油が入ったようなトクホのジュースを買おうかなと迷っているんですが、24缶入って6,300円もするんです。ずっと飲み続けなきゃいけないし、、それはちょっとつらいかなと思って迷っています。だったら食品のほうで手間をかけても(鰯料理を作って)、手っとり早くやるよりもお金かけないでやろうかなと。」
5.健康食品市場攻略の鍵
健康高関心リーダーの定性的な理解から、健康食品市場攻略の鍵をまとめると次のとおりである。
美と生への欲求・願望の心の琴線を狙え
特に女性の方がその意識は強いが、男性も潜在的にはそうである。疾病者及びそれに近い人は病気の治療、及び発症を抑える必要があり、その役割は医薬品であり、科学的な食餌療法である。未病領域にある人は「病気になりたくない」のが最終目的ではなく、「美しく」「楽しく」人生を生きたいのである。
美と生への欲求につながるカテゴリー・アイテムを選択せよ
中性脂肪は≒ダイエット美容であり永続的なテーマであり際限がない欲望である。より細くより美しく。しかし血糖値、血圧は正常化すればそれで良い。よりよくを追及するテーマを発見しアプローチすべきである。
欲求・願望の心の琴線にふれる情報を開発せよ
もちろん、科学的な裏付けは必要ではあるが、データだけでは説得できない。リアルな(影響力のある人)の体験者情報や、実感に近い表現方法である。「血液サラサラ」や血流をスリットに通す実験映像などである。また、有用な用途用法情報も価値を増す。
リーダーのいるコミュニティーを狙え
健康関心の高い人が多いコミュニティーでは、多くの情報が集まって来るが、フィルターにかけられ、時にはオリジナルな工夫や用途の情報が付加され、他のコミュニティーに拡大して伝播していく。フィットネスクラブはかつては一部の人のコミュティーであったが今は「普通に高感度な」人達があつまる場所に変わってきている。効率よくマスを狙えるコミュティーのひとつだろう。
食品として当たり前の商品設計
おいしい
安全・高品質
手頃な価格
ポピュラーな食材カテゴリー
以上は長期継続の基本条件である。
真に健康意識の高い人はサプリメントに過剰依存せずに、バランスの良い楽しい食生活を志向している。まだまだ、健康情報番組のトレンドに影響されやすいが、それは流行に乗っているのであり、楽しんでいる側面が大きい。以下は健康意識の高い人の食に対する考え方のポイントである。
一度は健康食材の流行に乗るが、それだけでは長続きしない
ふだんの食事が大事だが、昔と比べて今の野菜は栄養素が激減しているから、サプリで適度に補なった方がいい
食べ物だけではなく適度な運動は年齢とともに特に必要
食事というのは栄養面だけではなく、家族で食卓で楽しみながら同じものを食べる時間を共有することの意味が大きい
ダイエットでがまんすることも大切だが、あまり細かいこと気にせずに、食を楽しむことももっと大切
最近のキーワードは「1日30品目」である。これも流行といえば流行であるが、単品食材、単機能効果の情報に振り回され、過剰にその商品を偏食するというトレンドは終わりに近づいているのかもしれない。しかしながら、時間もない、知識もない、技術もない、多くのユーザーにはハードルが高い。これは単品ヒットで解決できる問題ではない。トータルにこの問題に真摯に取り組める企業が求められているのだろう。
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